急激な運動は危険!?運動の体への負担
身体を動かせば元気になる、
だからスポーツは身体にいい!
無条件にこう思っていらっしゃいませんか?
実は、「スポーツ選手は早死に傾向にある」と
主張する研究者が少なくないようです。
運動不足が生活習慣病の原因になることは
皆様もご存知ですよね。
平均寿命と健康寿命の差が開くほど
国庫にかかる医療費の負担も大きくなるため、
厚生労働省は国民に向けて日常的な運動を奨励しています。
日本政府が国を挙げて裏付けを取り、
「運動は生活習慣病の予防に有効である」
と確信したわけです。
では、なぜ研究者のあいだでは、
古くからスポーツと早死にの因果関係が
議論の的になってきたのでしょうか。
スポーツのリスクと身体にいい運動
2013年にオーストラリアの研究者チームが
発表したところによると、芸能人・スポーツ選手の
平均死亡年齢は77.2歳で、
専門職・学術職の平均死亡年齢は81.7歳、
軍事・政治関連職の平均死亡年齢は83歳だったのだそうです。
この時の調査対象は2009年から2011年の間に
ニューヨーク・タイムズに掲載された訃報でした。
同じように名声を得ていた職業人のなかで、
最もよくトレーニングし、鍛えていただろうスポーツ選手が
短命な傾向を示したのです。
スポーツのリスク:スポーツ選手の場合
世界の頂点で活躍するほどのスポーツ選手は、
激しい筋力トレーニングに過度の有酸素運動を重ね、
酸素を消費しすぎる状態に陥りがちです。
適量を越えた筋肉も有酸素運動も、
老化の原因物質である活性酸素を増やす原因のひとつです。
活性酸素が増えすぎる弊害は、
老化がはじまる年代になってから急激に表出します。
通常よりも早く老化が進行し始めるのです。
また、運動負荷が大きくなれば心拍数も当然上昇しますが、
これも早死にを招きます。
安静時の心拍数が60回未満の人を1とすると、
75回以上で突然死のリスクが3.5倍になると
言われています。
スポーツの種類では、相撲などの瞬発力が求められる
格闘技が最もリスクが高いようです。
スポーツのリスク:趣味でスポーツに取り組んでいる場合
毎日身体を動かしてどんどん負荷を増やしている方と、
普段はあまり動かず、マラソン大会などで
一気に負荷をかける方、二つのパターンで
リスクの傾向が変わってきます。
まず、毎日しっかり運動している方の場合、
運動量はどんどん増えるでしょうし、
そうなれば筋肉が増えて、食べても太らない体質に
変化していきます。
活発にエネルギーが生産されている証拠です。
エネルギー生産は有酸素代謝ですので、活性酸素も増殖します。
活性酸素に抵抗するために作られる体内酵素の
合成量は年々減っていきますから、
プロのスポーツ選手とおなじように、
歳を取るほど老化が加速することになります。
普段あまり動かない方については、
突然の運動じたいがリスクそのものです。
人の身体は毎日の生活を記憶します。
日ごろからほとんど体を動かしていない方が
突然フルマラソンやトライアスロン、
あるいはゴルフの大会に挑み、心不全で急死する事例が
頻発しています。
心臓に急な負担がかかると“脈”が止まる:心室細動
心臓は筋肉の塊です。
心臓全体が収縮して血液を送り出し、
帰ってきた血液を取り込み、循環させます。
何らかの原因で心臓の動きが乱されると、
一部分ずつの不規則な収縮ばかりで
心室全体の収縮にならず、血液を押し出す働きが
失われてしまうのです。
「心室細動」と呼ばれる症状です。
心室細動が数分間つづくだけで人は死に至ります。
心室細動の原因としては、
過度な緊張、動脈硬化による血栓症、急激な運動、
先天性の心臓病、不整脈などが挙げられます。
フルマラソンやトライアスロンの大会中に
見られる突然死の多くがこの心室細動によるものです。
若い方でも、運動不足ならば
心臓は“運動しない生活”に慣れ切っています。
突然の負荷に耐えられないのは当然なのかもしれません。