ハスカップから健康に

アイヌ民族は本州の東北北部地方から、

北海道、樺太、千島列島にかけて独自の文化圏を

形成していた民族の名前です。

「アイヌ」はアイヌ語において「ひと」を意味します。

植物は「カムイ」、動物も「カムイ」、

火や風、病気、飢饉のような現象もまた「カムイ」と

呼んだといいます。

「カムイ」は「神」の意味であり、

アイヌの人々はあらゆるものに魂が宿り、

人と同じような感情を持っていると考えたのです。

 

そのため、彼らは自然界からの恵みに感謝する気持ちを忘れず、

狩猟で得た獲物には敬意をもって魂を送る儀式を行いました。

 

何かとせわしない現代生活です。

「忙しい」は「心を亡くす」と書きますよね。

心と肉体はお互いに影響し合うもの。

もしも日ごろから心がやせ細るような思いを

していらっしゃるのだとしたら、

その暮らしはあなたの健康寿命を削り、

将来の病気リスクをじりじりと引き上げていることになります。

 

余裕がないから。

時間がないからと、ついついジャンクフードや

手軽にエネルギーを摂取するだけのインスタント食品に

頼りすぎるのは要注意です!

コロナ禍が危機的状況を迎え、

国際情勢が緊張を高める今だからこそ、

何があっても大丈夫だと思えるように

心身を健康に保つ必要があるような気がします。

アイヌの人々に伝わる“地に足をつけた生活”は、

きっとその参考になるはずです。

 

アイヌの食文化って?

アイヌの食文化は、調理法よりも食材とする海の恵み、

山の恵みの種類や取り扱いに特徴があると

言われています。

例えば、食生活の中心となっていたのは

「ルル」または「オハウ」というシンプルな

汁物だったのだとか。

鮭を用いた「チェプルル」の場合、

調理法は、海藻で出汁を取った汁で、

アクを抜いたすべての具材に火を通すだけです。

 

出汁を使用すると減塩の効果が期待できます。

「チェプルル」の具材には葉物野菜、

根菜、菌類、鮭、海藻を使用するので、

栄養バランスの面でも健康的な料理と言えるのでは?

メニューひとつの健康効果では現代の和食と

大きな違いがありませんよね。

食材の取り扱いに視点を変えてみると、

ひとつの特徴が浮かび上がってきます。

アイヌの生活は自然に寄り添っていました。

森の中で自然に得られる食材を採取し、

一年のなかで最も栄養豊富な状態で食べていたのです。

冬から春にかけて、北海道の野山は深い雪に埋もれて

収穫物が激減します。

その間の食事も、やはり旬の時期に得た食材を

加工保存したものでした。

 

現代ではハウス農業が盛んになって、

冬でも夏野菜が出回っています。

季節外れのフルーツも出回っています。

ところが、本来の収穫期を外れると、

野菜や果物に含まれる栄養素は減少してしまうのです。

旬の時期に得た旬の食材を食べること、

これこそ、アイヌの食文化が教えてくれる最も大切な

「基本」なのだと思われます。

 

アイヌ民族の健康食品「ハスカップ」

自然と共生していたアイヌの人々は、

薬効植物の発見と活用にも秀でていたという

記録が残されています。

大和民族による北海道開拓時代、

アイヌの人々は入植してきた新たな住人たちにも

森の恵みを分け与えました。

婦人病に苦しむ女性を「オトンブリキナ」という

薬草風呂と温湿布で治したり、

「キキンニ」という樹の薄皮を煎じた風邪薬で

肺炎患者を治したりしたのだそうです。

 

こうした薬効植物のほとんどが現代では失われています。

というのも、大和民族の入植に伴う薬効植物の乱獲で

もともとの数が減っていたうえに、

北海道開拓時代を通して河川は護岸工事が進み、

「キキンニ」のような植物の繁殖地は激減しました。

そして、現在でも山深くに分け入れば

「オトンブリキナ」も「キキンニ」も

わずかに生き残っているのではないか、

とは言われていますが、これらにまつわる

アイヌの口伝はすでに途絶え、薬草を見分ける知恵を

もう誰も持っていないのです。

 

北海道開拓期を生き延びたアイヌのスーパーフード

在来の薬効植物が姿を消す中、

むしろ存在感を増した稀有な果物「ハスカップ」

についてご紹介します。

在来の「ハスカップ」は北海道平野部と高層湿原で

自生していたそうですが、

昭和40年代に栽培が始まり、現在でも

不老長寿をもたらす果実として珍重されています。

「ハスカップ」の語源はアイヌ語の「ハシカブ」で、

枝のうえにたくさんなるものという意味です。

木そのものはマツムシソウ目スイカズラ科スイカズラ属の

落葉低木で、和名は「クロミノウグイスカグラ」、

この低木の上になる果実が「ハスカップ」です。

不老長寿をもたらすとされる理由は、

ハスカップに含まれる抗酸化成分の数々です。

眼精疲労や眼病予防で人気の成分、

アントシアニンと言えばブルーベリーです。

ハスカップはブルーベリーの3倍から10倍もの

アントシアニンを保有しています。

アントシアニンはポリフェノールの一種で、

体内の活性酸素を除去する働きがあります。

ハスカップはこの大量のアントシアニンのほかにも、

ビタミンE、ビタミンCによる複合的な

抗酸化作用を持ち、さらにカルシウム、

鉄分、ロガニンなどの有用な成分を含むため、ア

ンチエイジングと同時に滋養強壮による

免疫力アップも期待できるために、

不老長寿の秘薬と称されたわけです。

 

  • ハスカップの活用方法

ハスカップの収穫期は6月上旬から8月中旬までです。

1年間でたったの2ヶ月と短いですよね。

しかも、ハスカップの皮は薄く繊細で、

ほとんど生のまま流通しません。

生産地北海道ですら、生の状態で入手できる機会は稀です。

旬のハスカップを食べたい方は、

塩漬け、酢漬け、砂糖漬けで入手なさるといいでしょう。

酢漬け、塩漬けはごはんのお供に、

砂糖漬けはお菓子作りにぴったりです。