加工肉の発がん性リスク
現代の日本ではいつでも気軽に
食肉を入手できますよね。
寒暖差疲労が厳しくなる夏は、
自宅で焼き肉を囲むご家族や、
屋外でバーベキューを楽しむ時期です。
動物性タンパク質は人間が生きるために
必要なアミノ酸を効率よく吸収できる食品
でもあります。
また、人は高カロリーな食事をおいしいと
感じるようになっています。
『お肉を食べると元気が出る』
『元気を出したいときは肉を食べるといい』
と言われるのは、あながち間違い
というわけでもないのかもしれません。
しかし、長期的な健康を考えると、
動物性タンパク質に偏った食生活はむしろ有害であると
多くの医師、研究者が警告しています。
老化研究の権威であるデビッド・A・シンクレア氏も
また著作「ライフスパン」の中で
このように指摘しました。
「動物性タンパク質にマイナス面のあることは、
ほとんど議論の余地がない」
「加工した赤身肉は特にいけない。
ホットドッグやソーセージ、ハムにベーコン、
素晴らしく美味であっても、恐ろしく発がん性が高い」
本来、肉とは保存期間が短いものです。
食料自給率が低い日本で流通している生肉、
加工肉は国産と外国産の分量がほぼ拮抗しています。
ここ数年はじりじりと国産の割合が
押し上げられつつありますが、家畜を育てるための飼料は
ほとんど外国に依存しており、
自立した生産体制だとはとうてい言えません。
日本にとって外国と言えば海の向こうですよね。
貿易関係にある外国から海を渡って
食肉が運ばれてくるわけです。
肉の短い保存期間という問題をクリアするために、
加工肉には保存料が使われていますし、
生肉でさえ見栄えをよくするための
発色剤が使用されているのです。
赤身肉そのもののリスクと、
加工肉の発がん性についてもう少し詳しく見てみましょう。
裏付けられた加工肉の「発がん性」
デビッド・A・シンクレア氏は動物性タンパク質に
偏った食生活は心血管系疾患による死亡率とともに、
がんの発症率を高めることが複数の研究で
報告されている、としています。
赤身肉は心臓病の源になる物質を含んでいるので、
もともと心血管疾患のリスクを高める
食品ではあるのです。
では、加工肉になると発がん性を高めるのは
なぜなのでしょうか?
ここで参考になるのが、日本の国立がん研究センターが
提供している情報です。
2015年に国際がん研究組織(IARC)が発表した
加工肉などの発がん性に関する報道を受けて、
独自の調査や解説を加えた資料になっています。
これによると、IARCがまとめた加工肉による
がん死亡は3万4千人で、喫煙、アルコール、
大気汚染に次ぐリスクとのことでした。
大腸がん発症のリスク評価としては最高レベルの「Group1」です。
「Group1」は「ヒトにおいて発がん性の十分な証拠がある」
という評価で、疫学的な証拠が十分にあるとして
世界的なニュースになりました。
なお、牛、豚、羊肉全般の発がん性についても
「Group2」の「ヒトにおいて発がん性の限定的な証拠があり、
実験動物において発がん性の十分な証拠がある」
と評価されています。
「赤身肉」は脂肪分が少ない部位を示し、
「赤肉」は牛、豚、羊肉全般を指します。
心臓病の原因物質を多く含むのは赤身肉です。
「赤身肉」と「赤肉」は意味が異なりますのでご注意ください。
IARCが指摘しなかった「発がん性」の原因物質
IARCは疫学調査によって証明された
加工肉や赤肉と発がん性の関連を指摘したのみで、
発がん性の原因物質にまでは言及しませんでした。
もやもやとする方、原因物質が気になる方、
多いかと思います。
例え赤肉と加工肉を避けても、
実は他の食品にも同様の原因物質が含まれている、
となれば、食べたいものを我慢した努力が報われない、
などという事態に陥りかねません。
加工肉に含まれる物質については、
英国の研究機関キャンサーリサーチUKが指摘しています。
・赤身肉に多く含まれる「ヘム」
・保存のために添加される硝酸塩と亜硝酸塩
・高温調理で発生する複素環式アミンと多環式アミン
この3種類の化学物質がいずれも人体に害を与えることが
分かっており、継続的な摂取によって
リスクが積立式に増加していくと考えられます。
1日50グラムの加工肉を食べると大腸がんリスクは18%増加する
計算になり、
「いかに食卓から加工肉を排除するか」
が今後のQOLを維持するための課題になりそうです。
~50グラムの加工肉の目安~
・ウィンナー、ソーセージは3本程度
・薄切りハムは5枚程度
・薄切りベーコンは3枚程度